【試し読み】いろんな情報に影響され、すぐに落ち込んでしまいます
いろんな情報が入ってきたり、誰かに何かを言われたりすると、とても影響を受けやすく、すぐに落ち込んでしまいます。自分にとって必要のないことに影響を受けないようにするには、どうしたらいいでしょうか。
インターネットの使い方を誤らないように
近年は、テレビや新聞だけでなく、インターネットの急速な普及により、個人情報やフェイクニュース(真実でない情報)など、真偽不明で、本当に必要かどうかも分からない情報が洪水のように押し寄せてくる世の中になりました。
パソコンを開けば、迷惑メールや企業広告の山。スマートフォンを開けば、フェイスブックやインスタグラム、ツイッター、ラインなど、ついつい時間を忘れて見入ってしまう人も少なくないと思います。
マルクス・ガブリエルというドイツの哲学者は『つながり過ぎた世界の先に』という本の中で、インターネット上のソーシャルメディアについて、人は、それらを楽しんでいると思っているが、実際には窒息していると述べています。
この質問者の方が「いろんな情報が入ってきたり」とおっしゃる情報は、必ずしもインターネットの情報だけではないかもしれませんが、現代社会において、インターネットによってもたらされる情報は膨大なもので、またそれに影響を受ける人も少なくないので、まずそのことについて述べたいと思います。
例えばインターネットで、グーグルを使って検索すると、グーグルのAI(人工知能)が、その人の検索行動を把握して、その人の関心のありそうなものを次から次へと表示してきます。なるべく長時間、インターネット上にその人をとどまらせようとすることがAIの目的だからです。アマゾンで本を買うと、関連した書籍の広告を次々と表示してきて、結果として、何冊も買うことになってしまったりします。
私たちは、自分の意志で、インターネットを利用していると思っていますが、実際にはインターネットによって操作されているのです。
私たちは、今までの人生経験から、自分なりの考え方や物の見方を身につけています。そして、インターネットに接すると、どうしても私たちは、自分と似た考え、似た見方に注目しがちです。そういう意見を繰り返し目にすることによって、さらにもともとの考え方が強化され、極端になっていく傾向があるという研究結果があります。
もともと物事に対して悲観的、ネガティブな考え方をする人が、インターネットで繰り返し検索することで、さらに悲観的、ネガティブな考えに陥っていく、そういう可能性があるということです。
自分と他人の境界線を意識しましょう
さて、この方のもう一つの悩みは、「誰かに何かを言われたりすると、とても影響を受けやすく、すぐに落ち込んでしまいます」ということです。
私たちは誰でもそういう経験があるのではないでしょうか。私自身を振り返っても、ほとんど知らない相手からでも、悪口を言われると何日も落ち込んだりしてしまいます。
この時に大切な考え方は、「境界線を意識しましょう」ということです。
「境界線」とは、人と自分を隔てるラインです。自分は自分であって、他の人のものではありません。他人が許可なく、自分の領域に入ることは許されませんし、自分が他人の領域に無断で入ることも許されません。
「境界線」というのは、土地や家の境界線だけではなく、人間関係にもあります。
自分が相手の心の中に土足でずかずか入って、「あなたはこうだ」「あなたはこうすべきだ」と言うことはできませんし、相手がこちらに「あなたのためを思って言っているのよ」「あなたには裏切られた」と一方的に求めることもできません。
もちろん、他の人の意見は、それなりに尊重すべきだし、当たっている部分もあるかもしれません。しかし相手がすべて自分のことを知っているわけではないし、さまざまな事情を承知しているわけではないでしょう。相手の意見は意見として聞きつつも、最終的には自分で判断し、自分で決めていくしかないのです。
(『月刊なぜ生きる』令和3年9月号より)
ほかにも、「フェイスブックうつ」の原因や、インターネットの使い方、境界線の引き方などが本誌に載っています。
全文をお読みになりたい方は、『月刊なぜ生きる』令和3年9月号をごらんください。
『月刊なぜ生きる』令和3年9月号
価格 600円(税込)