Q認知症の祖母に、どのように接すればいいでしょうか
祖母が、アルツハイマー型認知症と診断されました。しばらく帰省しておらず、今度久しぶりに帰るのですが、認知症になった祖母は、私のことを覚えているのか不安です。また、認知症になると、人格が変わってしまうのでしょうか。久しぶりに会う祖母に、どのように接すればいいのでしょうか。
最後まで、その人らしく幸せに生きられる社会に
認知症とは、脳の機能低下により認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態のことです。
そのうち約60パーセントが、アルツハイマー型認知症といわれるものです。
認知症の症状は、大きく分けて二つあります。中核症状といわれるものと、周辺症状といわれるものです。
中核症状とは、脳の細胞が壊れ、その細胞が担っていた機能が失われることによって起きます。
*記憶障害(物忘れ、さっき起きた出来事を思い出せない、人の名前を思い出せない)
*見当識障害(年月日や時間、季節、場所などが分からなくなる)
*実行機能障害(物事の計画を立てて実行すること〈例えば、夕飯のメニューを考えて、家にある食材と買いに行かなければならない食材を区別して、買い物に行く、など〉ができなくなる)などです。
周辺症状とは、行動・心理症状ともいいます。英語では、BPSD(BehavioralandPsychologicalSymptomsofDementia)といいます。これには、不安・抑うつ、徘徊、物盗られ妄想(自分が置いた財布の場所を忘れることで、誰かが財布を盗ったと思い込む、など)、暴力・暴言などがあります。
なお、認知症で冒されるのは、脳の中の認知機能を担う部分で、全体ではありません。感覚や運動をつかさどる部分は、比較的保たれます。認知症になっても、保たれる部分が少なくないことも、ぜひ知っていただきたいと思います。
認知症の対応に必要な二つの考え方
さて、認知症を考える時に、二つの視点があります。
一つは、認知症の身体面に注目する見方です。つまり「認知症とは、脳神経機能の低下とそれによって起きる行動面、心理面での症状である」という考え方です。そうすると、治療の中心になるのは、脳神経の機能を改善する薬ということになります。しかし現在、進行を遅らせる薬は開発されていますが、認知症を治す薬は見つかっていません。そういう意味で、少なくとも現時点では、認知症は、「治らない病気」ということになります。
もう一つの考え方は、認知症の心理・社会面、生活面に注目する見方です。つまり、「認知症とは、自尊心が傷つき、これまでの対人関係が壊れる病気である。そこから、行動・心理症状が生まれる」というものです。この考え方からすると、脳の機能が低下するのは、年を取ればしかたがない、物忘れは誰にでも起きる、大切なのは、認知症になっても、自尊心を保ち、周囲の人とよい関係を持ち続けることだ、ということになります。
そういう意味では、認知症は、改善可能な病気、ということになります。実は、認知症の対応には、この両方の考え方が必要です。
(『月刊なぜ生きる』令和4年11月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和4年11月号
価格 600円(税込)