自分は幸せなのか、不幸なのか?
誰と比較するかで大変わり
「銀メダリストの不満」に陥っていないだろうか
「幸福」の分析を続けましょう。
私たちが求めている幸せは、「相対の幸福」と呼ばれるものです。ここで「相対」とは、「比べる」ことをいいます。私たちが何かを判断する時は、必ず他のものと比較しなければなりません。
一例を挙げましょう。総務省の発表によると、2021年の日本人の携帯電話の月額料金は、平均約3,000円でした(データ容量月20GBのプラン)。これは高いでしょうか、安いでしょうか。前年は8,000円を超えていたので、それに比べればだいぶ安くなりましたが、ロンドンの約2,000と比べたら、まだ高いと言わざるをえません。同じ3,000円が、何を基準とするかによって、安くもなり、高くもなります。しかし何かと比べなければ、安いとも高いとも言えません。
このように、比較しないと判断できないのが、私たちの知恵の特徴なのです。それは人間の「精神の根源的な性質」だと、ヒューム*1も言っています。*2
自分は幸せなのか、不幸なのか。それも、誰と比較するかによって決まります。
単純に考えれば、オリンピックで銅メダルを取った人より、銀メダルのほうが満足度が高そうですが、実際は逆のことが多いのです。銅メダルの人は、メダルを取れなかった大勢の選手と比べて、表彰台に上れたことを喜べます。ところが銀メダルの人は、どうしても金メダルに目が向いてしまい、「あと一歩でトップになれたのに」という悔しさがあって、心から喜べないそうです。
*1 ヒューム……18世紀のイギリスの哲学者
*2『人性論』デイヴィド・ヒューム(著)大槻春彦(訳)
(『月刊なぜ生きる』令和6年3月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和6年3月号
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