「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」
企業の利益は社会への恩返しに

カレーハウスCoCo 壱番屋 創業者
NPO法人イエロー・エンジェル理事長
「宗次ホール」代表
宗次德二さん

名古屋市中心部の広小路通には毎朝、歩道を掃除して花の手入れをする男性の姿がある。この〝街のボランティアおじさん〞こそ、カレーショップの中でも全国一の店舗数を誇る「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を一代で築き上げた事業家、宗次德二さん(73)である。

会長職を53歳で退いた今も、「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」の心得を貫き、さまざまな社会貢献活動に奔走する。事業を成功に導く秘訣とはいったい何だったのだろうか。

若手音楽家のための「宗次エンジェルヴァイオリンコンクール」「宗次ホール・ツィゴイネルワイゼンヴァイオリンコンクール」なども開催される宗次ホール(310席)

ココイチのお店は昭和53年の創業以来、日の出の勢いで全都道府県、海外へと広がり、今では1400店を超える。ところが宗次さんは店舗数が800に達した平成14年、あっさりと事業を後継に譲り、私財を投じて社会貢献活動に乗り出すことになる。「社会への恩返し」として、福祉や芸術、スポーツなど各分野で資金援助するとともに、同19年には名古屋市にクラシック音楽のコンサート会場「宗次ホール」も建設した。

街の掃除は毎朝
午前4時前に起床

音楽ホールの上階に住む宗次さんの朝は早い。午前4時前に起床、デスクワークを済ませ午前6時、ホール周辺の掃除が始まる。エリアは、名古屋の旧テレビ塔付近から宗次ホール周辺までの通り約400メートル。「コンサートのお客様が通る道なのに、ゴミや雑草があまりにひどかったのが動機の一つ」と言う。

幾人かの有志とともに毎日1時間から3時間ほど。歩道を掃いて、放置自転車を整理し、中央分離帯などに季節の花を植えていく。「出張もできるだけ日帰りにし、年間350日以上はやります。朝は、街をきれいにするぞって、体がウズウズしてくるんです」

ホール玄関前でのお客さんの出迎えや見送りにも、宗次さんが立つ。「代表者が送迎に出るホールなんてないですよ、とも言われますが、私にすれば、当たり前のことなのです」

「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」──。若い頃からの信条は変わらない。宗次さんの徹底したお客様第一主義は、どこから生まれてくるのだろうか。

お客様の姿が見えると
夫婦で拍手をする

──「お客様が第一」というお気持ちはいつから。

25歳で喫茶店「バッカス」を妻と一緒に名古屋で始めた時からです。オープンの2日間で約300人のお客様でにぎわって、とにかく楽しかったのです。接客業というものに取りつかれてしまいました。

それまでは不動産取引業を自営していましたが、お客様の顔はほとんど見えません。大勢のお客様の笑顔がある喫茶店は、私の人生を180度変えました。この時に作った標語が「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」です。朝、最初のお客様が店の外に見えると、妻と一緒に拍手をしました。入店されてからも、心の中では拍手をしていましたね。

成功の秘訣といっても、一言でいえば、これしかないです。お客様に対し、感謝と真心込めたサービスを常に考えていれば、いろんなことが見えてくるのです。

アンケートはがき
毎日1000通 15年

──お客様第一といっても、徹底するのは難しいですね。

だからこそ、誰にでもチャンスがあるのだと思います。経営の素人だった私がある程度、成功できたのも、誰にでもできることをとにかく徹底してやってきたということなのです。経営で成功するのは決して難しいことではないのです。

──どんなことをされてきたのですか。

経営の先生を持たなかった私が唯一、よりどころとしたのが、お客様からのアンケートはがきです。昭和62年からココイチの全店舗に置きました。

きっかけは、私たちが気づかずに失礼なことをしていて、悔しい思いをされたお客様の声を聞きたいということでした。レジの前でお聞きしても、本心で答えてはもらえませんから。

届いたはがきを、いちばん最初に読むのが社長の私です。毎日、約1000通のはがきを3時間半かけてすべて読みます。これは役員退任の日まで丸15年間、一日も欠かさず続けました。読む時間を作るために始めたのが早起きなのです。どんなに疲れた時も、早朝4時台には出社しました。

(『月刊なぜ生きる』令和4年8月号より)

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