「誰かのために」が生きる力に
認知症になっても社会の中で
“はたらける”デイサービスを運営

「DAYS BLG!」代表 
「NPO法人 町田市つながりの開(かい)」理事長
前田隆行さん

もし今、あなたが「認知症」と診断されたら――?「何もできない人」というレッテルを貼られ、いろんなつながりが失われていく不安を感じないだろうか。そんな現状を転換しようと、認知症があっても社会の中で“はたらける”デイサービス(通所介護)を運営しているのが、前田隆行さんだ。東京・町田市で事業を始めて10年。介護を受ける人が仕事をする、という斬新な取り組みは海外からも注目され、理念を受け継いだ施設は各地に広がりつつある。認知症の介護ケアに新風を吹き込む前田さんのデイサービスを訪ねた。

社会とつながる
中継地点がBLG

前田さんが運営するデイサービスの名称は「DAYSBLG!」。BLGは英語のバリア、ライフ、ギャザリング(集まり)の頭文字。認知症と診断されても、みんなの力で生活を継続できることを目指そうという願いが込められている。

東急こどもの国線「こどもの国」駅から歩いて10分ほどの住宅街の中に、BLGはあった。一般的な二階建て民家だが、ここには、国内の福祉関係者をはじめ、台湾やシンガポール、中国、イギリスなど海外の行政機関の責任者らも見学に訪れる。その数はすでに「千組を超える」という。

BLGの特長を前田さんは次のように語る。「一般のデイサービスでは、利用者が折り紙や塗り絵といったレクリエーションなどをして、施設の中で一日を過ごしますが、BLGでは地域への出入りを経て社会や人とつながることを目標にしています。だからBLGは、メンバーにとって、その日の目的地ではなく“中継地点”なのです」

BLGでは、施設利用者もスタッフも「同じ場に集う仲間として水平な関係を維持する」ため、「メンバー」と呼ばれる。

仲間と一緒に
好きな仕事で自信回復

BLGでは朝と昼のミーティングで、メンバー一人一人がその日に行う「活動」を選ぶ。活動のメニューは、洗車作業、遊園地のベンチ清掃、地域新聞のポスティングなど。「一方的に作業をあてがわれるのではなく、それぞれが自分の気持ちや体調を考えて、『選択』することが、生きる意欲につながるのです」と前田さんは言う。

この日、洗車作業を選んだ数人のグループはスタッフとともに車に乗り、近くのホンダの自動車販売店に向かった。ホンダの赤いジャンパーを着込んだメンバーは60〜90歳。店先の展示車両にホースで水をかけては、タオルでふき上げていく。販売店の責任者から「丁寧な仕事は若い社員にも見習わせたい」という評価も受け、メンバーからは「人の役に立てた」「仲間とやると楽しい」という喜びの声があがる。

大切なつながりが
消えていく悲しみ

こうした活動について前田さんは「人が強い不安を感じるのは、大切にしていた社会や仲間とのつながりを失っていく時です。そうなると、自分の存在価値が分からなくなり、生きる意欲も衰えていきます。でも、再びつながりができれば、また気力を回復していくのです」と語る。

ホンダから支給される洗車作業への報酬「2万円」(1カ月)はみんなで分け合う。「報酬は、社会の役に立ったという証明として、皆さんの大きな自信につながります」

だが、この「はたらくプログラム」が生まれるまで前田さんは、「認知症の人が働けるわけがない」という世間の「無理解」と、闘ってこなければならなかった。「福祉の“ふ”の字にも関心がなかった」と言う前田さんが今、この分野の開拓に情熱を傾けるのは、いったいなぜなのだろうか。

(『月刊なぜ生きる』令和4年10月号より)

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