「悪人」こそ救われる『歎異抄』に驚き
インドから日本に伝わった
仏教文化の真髄を求めて

ジャワハルラール・ネルー大学(インド)元教授
アニタ・カンナさん

日本とインドの文化交流に尽くしてきた、インドのジャワハルラール・ネルー大学のアニタ・カンナ元教授が先日、京都市内で開かれたシンポジウムに参加するため来日した。インドから伝わった仏教が日本文化の根底に流れていることに関心を持つカンナ元教授は、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』などの古典を中心に研究してきたが、今、最も高く評価する書物は、浄土真宗を開いた親鸞聖人(しんらんしょうにん)の言葉が記された『歎異抄(たんにしょう)』だという。「悪人正機」で知られる歎異抄にはどんな魅力があるのか。「その出会いは、人生を変えるような驚きでした」と語るカンナ元教授に聞いた。

日本文化の根底に流れるブッダの教え

カンナ元教授は、インドの首都ニューデリーにある大学院大学、ネルー大学の日本語学科の教授として2018年まで30年以上にわたり日本語教育に携わった。日印の比較文学の学術交流、日本文学の英訳・ヒンディー語訳なども手掛けて文化交流に貢献、2020年には日本政府から旭日小綬章を受けている。研究対象は、古事記や万葉集から近代文学まで幅広い。

仏教文化をテーマにした京都でのシンポジウムの講演のあと、インタビューに応じてくれたカンナ元教授は「私が生まれたインド北部のパンジャーブ州は、肥沃な土地で、体の丈夫な人が多く、女性も美人が多いですね。私は例外ですけれども……(笑)」などと時折、チャーミングな笑顔を見せながら語ってくれた。

仏教説話が豊富な『今昔物語集』

カンナ元教授が特に研究に力を注いできたのは、数々の仏教説話を扱った『今昔物語集』。平安後期の作とされ、天竺(インド)から震旦(中国)、本朝(日本)までの三部構成で、「ほとんどは『因果応報』などの概念に基づいて、それぞれの国における仏教の発展を語っています。当時の僧侶たちは、今昔物語集をハンドブックにして説教に使っていました。現代でも通じる生きるためのエッセンスが詰まっています」

『今昔物語集』は日本の近代文学にも影響を与えていて、「特に芥川龍之介は『今昔物語集』を『驚きの文学』として高く評価しています。そこから題材をとった小説には『鼻』や『羅生門』『藪の中』『芋粥』などがあります。こうした小説からも、インドのブッダ(釈迦)の教えが中国を経て日本に根づいていったことが分かるのは、私にとって、とてもうれしいことなのです」

(『月刊なぜ生きる』令和6年2月号より)

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