【試し読み】孫がゲームばかりでロクに返事もしません。 どう接したらいいでしょうか?
世はまさにデジタル時代になりました。あんなにかわいかった孫たちも小学生に成長すると、わが家に来てもゲーム機からいっときも目を離さず、こちらから話しかけてもゲームに夢中で、ロクに返事もしません。対話にもなりません。何だか寂しい思いです。孫たちに、どのように接していけばいいでしょうか。
ゲームをするのは、よいことなのか、悪いことなのか
「子どもがゲームにハマって困る」という悩みは、このおじいさんだけでなく、すべての親の悩みではないでしょうか。それほど電子ゲームは、私たちの世界に深く根を下ろし、人によっては生活時間の多くを占めるものになっていると思います。
そこで今回は、ご質問にお答えする前に、そもそも子どもがゲームをするのはよいことなのか悪いことなのか、という点について考えてみたいと思います。
多くの大人にとって、子どものゲームは「困ったもの」「やめさせたいもの」になっていると思います。しかしもともと子どもがハマるものには、大人は眉をひそめると相場が決まっています。
「ゲーム障害」とは、どんな病気なのか
心配の中で最も大きいものは、ゲームが子どもの健康を害したり、精神の発達に悪影響を及ぼすのではないか、ということだと思います。例えば一時、『ゲーム脳の恐怖』(森昭雄著)という本が話題になりました(ただ現在は、この本は科学的な根拠が十分でない疑似科学だと批判を浴びています)。
2018年には、WHO(世界保健機関)が作成したICD -11(国際疾病分類第11回改訂版)に、「ゲーム障害」が初めて掲載され、ゲームに依存する状態が、一つの「病気」と考えられることになりました。
しかしこの「ゲーム障害」というのはどういう状態を指すかというと、
1.ゲームを自分の力でやめることができない。
2.日常生活のあらゆる活動より、ゲームを優先している。
3.ゲームのために、社会生活上で深刻な問題を引き起こしている(ゲームのために仕事に行けないなど)。
4.そういう状態が十二カ月以上続いている。
そのような状態の時、「ゲーム障害」と診断しましょう、ということになっています。
そこからすると、少なくとも昼間、学校へ行き、ご飯も普通に食べ、夜もある程度睡眠を取れている状態なら、「ゲーム障害」という病気とはいえない、ということになります。
「では、不登校の子どもはどうなのか。学校も行かずに一日中ゲームばかりしているのでは」と言われそうですが、不登校の場合は、注意が必要です。というのは、「ゲームがやめられないために学校に行けない」というのと「学校にどうしても行けないために、気分転換のためにゲームをやっている」というのは、意味が違うからです。前者ならば、確かにゲーム障害といえるでしょうが、後者なら、ゲーム障害とはいいません。ゲームにハマるのは、学校に行けない「原因」ではなく「結果」だからです。
そして私の経験からいえば、不登校の子がゲームにハマるのは、九割九分、後者のケースです。つまり、学校でのいじめや、傷つき体験があって、あるいは集団生活にどうしてもなじめない特性があって、学校に行けなくなる、しかしそういう自分を子どもは責めている。何もしないでいるとどんどんネガティブなことばかり考えて死にたくなるから、ゲームに自分の居場所を求める、ということなのです。
実際、不登校経験者に聞くと、「ゲームの世界だけが救いだった」「ゲームの世界だけが自分を認めてくれた」「ゲームがあったから生きてこられた」という人が少なくありません。現実世界で傷ついた人が、その傷を癒やし、回復していくために、ゲームの世界は大切な役割を果たすこともあるのです。
そしてそれは、不登校の子どもだけではなく、一見普通に学校に通っている子どもにとっても同じです。ゲームの世界が、人とつながる場所であったり、癒やしを得る場所であったりする可能性も確かにあるのです。
(『月刊なぜ生きる』令和3年6月号より一部抜粋)
このあと、ゲームに熱中する子どもへの接し方を明橋先生がアドバイスしてくださいます。
全文をお読みになりたい方は『月刊なぜ生きる』令和3年6月号をごらんください。
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