Q発達障害の妹に、家族として、どんなサポートができますか?

43歳・女性

40歳の妹は、発達障害を理由に定職に就かず、70代の母に生活の援助をしてもらっています。そのためか、母は金銭的に厳しくなる時があり、私が母の援助をしています。
最近、母から、「妹に会ってほしい」と言われました。
しかし、私にも自分の生活があり、妹の援助までは厳しい状況です。妹が定職に就いたら(精神的に落ち着いたら)会ってもいいと思いますが、今は距離を置きたいです。
発達障害の妹が、自立して生活するのは難しいのでしょうか。家族として、どんなサポートができるでしょうか。

明橋大二先生

すべての人にとって生きやすい社会に

発達障害とは、生まれつき脳の機能に、得意なところと苦手なところの差が強くある状態で、今から30年ほど前から、教育や福祉の分野で知られるようになってきました。

発達障害とされるのは、主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害、LD)などで、もともとそれらは、児童精神医学の分野では長年研究されてきていました。

しかし知的障害(精神発達遅滞)が比較的早くから、教育や福祉の分野で対応が進んできたのに対して、知的障害のない発達障害(知能検査をすると、平均の知能指数〈IQ〉は、正常範囲に入るものの、個別の能力を見ると、得意なことと苦手なこととの差が激しい)の場合は、従来、普通学級で、他の子どもと同じように対応されていました。

しかし、もともと他の子どもと脳の機能の違いがあるために、集団生活になじめず、いじめに遭ったり、先生から𠮟られたりすることが多く、そこから自信を失ったり、心に傷を受けたりする子も少なくありませんでした。

そこで20年ほど前から、発達障害というものがあって、それに合った対応が必要だということが、教員や支援者の中で徐々に知られるようになってきました。

さらに発達障害によって困難を抱えている人は、大人 の中にも少なくなく、特に就労の面でさまざまな苦労をしていることが分かりました。

そうしたことから、発達障害の人に対して、子育て、教育、福祉、就労、さまざまな面から総合的な支援が必要だということで、平成16年、「発達障害者支援法」ができ、本格的な対策、支援が行われるようになったのです。

さらに平成28年、発達障害者支援法が改正され、そこでは、「発達障害のある人が社会生活を営むうえで直面する不利益は、本人ではなく社会の責任である」という考えが明確に示されました。

これは、障害は個人の心身・機能の障害によるもの、というかつての「医学モデル」ではなく、「障害は個人でなく、社会の側にある」という「社会モデル」という考え方です。

「車いすの人が階段を上れないのは、個人の問題」ではなく、「エレベーターやスロープを用意していない、社会の側の問題」であり、社会が対応を改善しなければならない、という考え方です。

実はこのような考え方は、現在、障害者支援の分野で世界中に広がっています。「バリアフリー」とか「ユニバーサルデザイン」という言葉を聞かれたことがあると思いますし、SDGsが「誰一人取り残さない」というスローガンで目指しているのも、そのような考え方です。

障害者にとって生きやすい社会は、単に障害者にとって生きやすい社会であるだけでなく、すべての人にとって生きやすい社会です。なぜなら、どんな人も、病気やけがによっていつ障害者になるか分からないですし、たとえ病気やけががなかったとしても、私たちはいずれ年を取っていきます。そうすれば、どんな人も何らかの障害を抱えるようになるからです。

(『月刊なぜ生きる』令和4年12月号より)

続きは本誌をごらんください。

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