人生はやり直せる
罪を犯した人の再スタートを応援する求人誌の発行人
株式会社ヒューマン・コメディ
代表取締役 三宅晶子さん
犯罪や非行歴があると社会復帰が難しいという現実の中で、それでも本気でやり直そうとする人たちを応援する求人誌がある。株式会社ヒューマン・コメディの代表取締役、三宅晶子(みやけ あきこ)さんが発行する『Chance!!』(チャンス)。創刊から5年めを迎え、刑務所や少年院を経験した人たちから「おかげでいい会社に入れました!」など喜びの声が届いている。異色の求人誌に、三宅さんはどんな願いを込めているのだろうか。
塀の中から届いた
うれしいお礼状
年4回発行の『Chance!!』(A4判)は70ページ前後の誌面に、建設業など約30社の案内を掲載している。
一見、普通の雑誌だが、その特色は「『絶対にやり直す』という覚悟のある人と、それを応援する企業のための求人誌」と表紙に宣言しているところにある。「出所したあと、安定した仕事や住居を見つけることは難しく、それが再犯を生む要因にもなっています」と、三宅さんは求人誌を創刊した意義を語る。
ただ、船出の時は不安いっぱいだった。創刊号は当初、全く反響がなく、受刑者支援団体の会報誌と一緒に配ってもらって徐々に反応が見え始めた。中でも、刑務所の中から届いた一通の手紙は今も忘れられない。
差出人は、30歳前後の男性受刑者。「私たちのための情報誌を作ってくれてありがとうございます」とあり、刑務所での作業中に出会う仲間たちにも、求人誌の請求先を少しずつ口コミで伝えています、と書かれていた。
「この手紙を読んだ時は、うれしかったですね。刑務所の中に、頼もしい営業マンが現れた!って」と三宅さんは顔をほころばせる。「塀」を越えて、気持ちが触れ合った瞬間だった。
今では、発行部数も3500部に伸び、受刑者ら約800人に個別に送るほか、刑務所や少年院、更生保護施設などに届けられ、「おかげでいい職場に恵まれました」「きっと立ち直ります」などの声が寄せられる。
表紙を飾る笑顔
過去と向き合う覚悟
そうした喜びは求人誌の誌面からも伝わってくる。表紙には毎号、仕事着姿ですがすがしい笑顔をたたえる人たちの写真が載る。彼らは誰なのか?
「皆さん、就職して頑張っている元受刑者や逮捕歴のある方たちです」。いずれも三宅さんが仕事先を訪れ、近況を聞きながら撮影している。
やや驚いたのは、表紙の裏側に本人自ら、出所した刑務所や少年院の名前を経歴として記していることだ。過去を隠すことなく堂々と向き合う悟が伝わってくる。そしてそれぞれ、〝後輩〟たちへのメッセージも載せている。
「自分にはチャンスなんてないと思っていたけれど、出所して覚悟を持って仕事を始めたら、いろいろなところにチャンスはあった」「自分を見てくれる人、認めてくれる人は必ずいます」「自分に負けないでほしい。まっとうに生きて仕事をしたら、自分のためになる」
もちろん、三宅さんも「被害者の方が不快に思うような重罪の人は遠慮してもらう」など配慮をしているが、「最近は、積極的に取材を希望してくる人もある」と言う。
一緒に生きていこう
手を差しのべる経営者
明るい誌面の裏側には、三宅さんの地道な努力がある。
求職者にはまず、専用の履歴書に次のことを書いてもらう。犯した罪名、懲役期間、事件の背景、それ以前の犯罪歴──など。「かなり高いハードルだと思いますが、自分が起こした事件を、他人や環境のせいにするのではなく、自分の問題として向き合ってほしいのです。結局、自分が変わらないと何も変わらないのですから」
(『月刊なぜ生きる』令和4年7月号より)
続きは本誌をごらんください。
『月刊なぜ生きる』令和4年7月号
価格 600円(税込)