人生100年時代の働く意味(1)
出世したところで、将来が安泰とはいえない?
収入が2倍になれば、幸せも2倍になるのか?
出世したところで、将来が安泰とはいえない?
「人生100年時代」に突入し、何のために働くのか、目的を明確にすることが一層、必要になっています。「仕事」の意味を哲学しましょう。
日本では戦後、終身雇用と年功序列がセットで広がりました。会社に尽くしていれば、定年まで面倒を見てもらえるという安心感があったのです。それだけに、自分の健康も家庭も顧みず、がむしゃらに働くサラリーマンも少なくありませんでした。それらの人たちは「企業戦士」「モーレツ社員」と呼ばれ、日本の経済成長を支える人材として重宝されていました。
しかし1990年代初頭にバブルが崩壊してからは、長期の不景気が続き、終身雇用は見直しを迫られます。能力主義、成果主義の激戦の火蓋が切られたのです。
会社には4とおりの「ジンザイ」がいる、と言った人がいます。宝といわれる「人財」はごくわずか。まずは社の目的を理解し、歯車(材料)として役立つ「人材」になるよう、カツを入れられます。さもなくば猫がいるよりはまし、いちおう人間がいるかな、という程度の「人在」どまりです。
リストラすべき「人罪」は誰かとなった時、にわかに「管理職フヨウ論」が浮上します。仕事には役立たない(不用)のだから、会社が養う( 扶養)ことは「不要」だ、と標的にされるのです。20年、30年と会社に身をささげてきたのに、これから子どもの教育費もかかる、ローンの返済もある、医療費もかさむという大事な時に、突然解雇になる悲劇があとを絶ちません。
中高年になってから新たな就職先を探すのは、難しいものです。経営者の側に立てば分かることですが、どうせ新たな人を雇って教育するなら、すぐ定年になってしまう人より、若い人を選ぶでしょう。なかなか再就職ができないと、自分はどこからも必要とされていないという感覚に襲われます。会社の重役だった人が、大学生と一緒にアルバイトをしなければならないこともあるのです。地位のあった人ほど、収入は激減し、精神的にも経済的にも苦境に立たされます。
たとえ解雇されなくても、会社がいつまでも存続する保証はありません。世の中の変化が激しいので、時代遅れになった企業は淘汰されていきます。倒産した会社の平均寿命はどんどん短くなり、2020年は、23.3歳でした。
その一方で、私たちの働く年月は着実に長くなっています。2013年に定年年齢が60歳から65歳へ引き上げられることが決まりましたが、この流れは止まりません。やがて定年は70代、80代となり、50年以上は働くのが当然という時代が来るでしょう。たとえ脚光を浴びるような会社に入社できても、30年後、40年後には、会社そのものがなくなっているかもしれないのです。
もはや勤め先で「出世」したところで、将来が安泰とはいえません。働く意欲が減るのは当然でしょう。ギャラップ社(米国)が全世界1,300万人を対象にした調査(2017年発表)では、日本の企業には「熱意あふれる社員」が6パーセントしかいませんでした。アメリカの32パーセントと比べて大幅に低く、ほぼ世界最下位です。これが2021年には、5パーセントにまで下がっています。やりがいをもって働くにはどうすればよいか、考えていきましょう。
(『月刊なぜ生きる』令和5年5月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和5年5月号
価格 600円(税込)