相続の手続きは複雑です
相続の話し合い
相続については、49日が過ぎた頃から、話し合いを始めることが一般的です。スムーズに話し合いがまとまることが多いと思いますが、相続人の間で感情的な対立があったり、遺産がとてもたくさんあったりするような場合には、意見がまとまらないことがあります。
例えば地方に住んでいる相続人と都会で暮らしている相続人が話し合う場合、そもそも相続に対する考え方がかなり異なっていることが原因で、解決が難しくなることがあります。地方では「長男が家を継ぐ」という考え方もまだ多いのですが、都会では「法律に従って分割する」と考える人が多いように思います。そのため意見が一致せず、裁判所の手続きを利用することとなります。このあとに説明しますが、裁判所で解決をしようとすると、さまざまな手続きを重ねていくこととなり、多くの時間やお金がかかってしまいます。それはお互いにとってよくありませんので、譲れるところはできるだけ譲って、話し合いをまとめることが賢明です。
生前に言っていたこと
また、話し合いの場で、「生前にお父さん(お母さん)は、私にこの財産をやると言っていた」という発言を聞くことがあります。しかし、口頭で言ったことは法的には遺言になりませんし、本当に言ったのかどうかもハッキリしませんので、このようなことを持ち出すと、かえって解決を難しくすることがあります。「次男は東京へ行ってしまって、ほとんど家に顔を出さないと、お父さんがいつも不満を言っていた」と長男が言います。それに対して次男が、「帰省した時に、長男と嫁が自分を大事にしてくれないと、いつもお父さんが言っていた」などと言ったりして、お互いを批判し合うこともありがちです。しかし、お父さんの本心は分かりません。人間というのは、目の前にいる人に同調して、その人が言ってほしいと思っていることを言うという傾向があります。あまりそのような発言を持ち出さないほうがよいでしょう。 話し合いによって意見がまとまれば、遺産分割協議書を作って、不動産の登記や預金の引き出しなどの手続きを進めていくことができます。登記手続きは司法書士に依頼する人が多いと思います。
(『月刊なぜ生きる』令和5年5月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和5年5月号
価格 600円(税込)