『平家物語』巻一祇王 一切が滅びる世にあって 滅びない幸せを求めた4人の女性たち
「幸せは、長くは続かない……」
そう聞いても、実感のわかない私たちのために、『平家物語』は、数多くの事例を挙げて、「諸行無常」(すべてのものは移り変わっていく)と説いています。
はたして幸せとは何か。どうすれば悔いのない人生を送れるのでしょうか……。
ここに、『平家物語』の巻一に登場する二人の女性、祇王御前と仏御前の身に起こった出来事を意訳して掲載します。
日本人に長く親しまれてきた古典の中に、参考になるところがあれば、皆さんの人生に活かしてみてください。
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秋になると枯れる花
平安時代の末期のことです。天下を思いどおりに動かす権力を握った平清盛は、勝手な振る舞いが多くなりました。
例えば、宴会などで歌や舞を披露する「白拍子」の女性に対して、次のようなことがあったと伝えられています。
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都で最も評判の白拍子は、祇王という17歳の女性でした。祇王が、ある日、平家の屋敷を訪れた時のことです。
清盛は、美しい祇王をひと目見るなり、惚れ込んでしまいました。そのまま屋敷にとどまるように命じ、彼女を側室にしてしまったのです。その代償として、祇王の母に立派な家を与え、毎月、多くの米と金銭を贈るようになりました。これによって貧しかった祇王の家族は、一躍福になり、楽しい日々を過ごすようになったのです。
「祇王は、えらい幸運をつかんだものだ。玉の輿に乗るとは、このことだ」
と、都は大騒ぎになりました。
それから3年たった頃、白拍子の世界に、キラリと光る新人が現れました。名は仏御前、16歳の女性です。
「こんな上手な舞は見たことがない」
と、仏御前の人気は高まる一方でした。
仏御前は、積極的な女性です。
「誰に褒められようと、この国を動かしている清盛殿に評価されなかったら一番とは言えないわ。こちらから押しかけて、私の舞を見ていただきましょう」
と、美しく装って平家の屋敷へ向かったのです。
(『月刊なぜ生きる』令和6年1月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和6年1月号
価格 600円(税込)