【第7回】日々を彩る書道エッセイ 花咲く書道|今月のテーマ「守」
花咲く書道家・永田紗戀(ながた されん)さんの連載が、『月刊なぜ生きる』令和3年12月号より始まりました♪
永田さんが作品に込めた想いをエッセイで綴ります。
花咲く書道の描き方も写真付きで紹介。気持ちの伝わる「書」が魅力的です。
見るだけで心に花が咲いたような、気持ちが和らぐコーナーです。
それは真夜中でした。母が救急車を呼ぶ電話をしている背中と、苦しむ祖母の様子を交互に見つめていました。
しばらくするとサイレンの音が近づいてきます。聞いたことのあるこの音が、おばあちゃんのものだなんて……。何度聞いても寒気がしました。
「されん! 救急車を誘導してきて!」
叫ぶ母に足が震えました。団地は入り組んでいて、救急車が家の近くまで入れないことは知っていました。以前は父が苦しむ祖母を介抱し、母が救急車を誘導しに行っていました。離婚してしまった今、母の役目は私になったのだ……。そう分かった瞬間に、足の震えがぴたりと止まりました。
父が消えて……。祖母がまた倒れて……。「強くならないと……。私は……、強くなる……」。救急車の音が大きくなるたびに、一歩ずつ足早になりながら、何度かこの言葉をつぶやきました。
重いさくを持ち上げ……、「こちらです!」と手を挙げて……。祖母は担架で運ばれ、「家のこと、頼むね」と苦しい笑顔で母は私の頭をなでました。「大丈夫、任せて」。無理やり作った精一杯の笑顔。玄関の扉が閉まり、しばらくするとまたサイレンが聞こえました。祖母と母が病院へ行った……。その音が遠くなるにつれて涙があふれてきます。
「ねぇ……、強くなるんでしょ‼」 そでで涙をぬぐいながら、私が私を叱っていました。
プロフィール
(『月刊なぜ生きる』令和4年6月号より一部抜粋)
不安と責任の間で揺れ動く幼い永田先生の感情がダイレクトに伝わってきます。
今月のテーマ「守」に込められた決意はエッセイの後半へ。
エッセイ全文と花咲く書道の描き方は 『月刊なぜ生きる』令和4年6月号をごらんください。
▼今回の作品はこちら▼
『月刊なぜ生きる』令和4年6月号
価格 600円(税込)