【1月号 巻頭インタビュー】コンピューター時代に問われる「人間力」を語る

世界が称賛する最高齢のプログラマー
若宮正子さん 84歳

ゲーム制作で米アップル社や
国連から招待状
コンピューター時代に問われる「人間力」を語る

「70、80代はまだまだ伸び盛りですよ」と語る若宮正子(わかみやまさこ)さん。

80代でコンピューターのプログラミングを学んで制作した「おひな様」のゲームアプリが世界的なニュースとなり、予期せぬ人生が開花した。

米アップル社のCEO(最高経営責任者)と対談したり、国連で演説したりの大活躍が続く。

そんな若宮さんだが、コンピューターと暮らす時代に大切なのは、人間とは何か、生きる意味を考える「人間力」だと言う。

ITが人生100年時代を豊かにする、とチャレンジを続ける若宮さんに聞いた。

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(中略)

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バランスのとれた
  「人間力」が
   ますます必要になる

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──AIの時代の課題は
  どんなことでしょうか。

(若宮)人工知能君もまだ子供だから、変な方向に行かないよう、うまく育てないといけないのではないでしょうか。

でもこれはすごく難しいことです。

人間が何となくやっていたことを、人工知能君に依頼するなら、明確な「定義づけ」が必要です。

どのように定義づけるかが難問です。

例えば、疫病がはやったので、水道水に疫病の予防に効くワクチンを入れようとします。

水道水を飲めば予防できるけれど、副作用のある人が千人に一人いた。

でもそれを調べていると時間がかかってしまうので、一斉に水道水にワクチンを入れるという判断をしたとする。

でも、それは正しいことなのかどうか。

数が多いほうを助けるという論理で割り切ってしまっていいのか、という問題がありますよね。

これからの時代、「人間力」がますます重要になると思うのです。



──求められる人間力とは。

(若宮)数量化できないことは、コンピューターは苦手です。

悲しい日にはご飯がおいしくないことや、好き嫌いという気持ちも理解しにくいのです。

感情や心に関する能力、他者とうまく関わったり、新しいものにトライしたり、柔軟な発想をしたりする能力、これこそ人間力だと思います。


──AIの台頭を心配する声もあります。

(若宮)恐ろしいのはAIではなく、AIを悪だくみに使う人間が出てくることです。

やっていいこと悪いことの判断をAIにプログラミングするのは人間です。

マイナスの人間力を持った人が、人間の良心に反するものを作ってしまう事態は避けたいですね。

人間力のある人とは、バランスのとれた行動ができる人というのが持論ですが、そのためには、テレビやネットからの情報だけでなく、人間とどれだけ接したかということが問われると思います。

人間力を養うには、少なくとも「人間をよく知る」ことが必要だと思うのです。

私が改めて、人間というものを知るきっかけとなったのが、ネット上の老人クラブ「メロウ倶楽部」での交流でした。


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人間の姿
  〝生老病死〟を語り合う

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──どんな出会いがあったのですか?

(若宮)メロウ倶楽部には、いろんな書き込みのできる「会議室」があります。

「生と老」という部屋もあり、そこでは家族にも話せないような話もできます。

私たちハイシニアは近い将来、体力が衰えて病気になって、死んでいくという予定のうえで暮らしています。

人間、いかに生老病死と対峙していくか。

こういうことについて語り合う場は貴重です。

そんな中で、忘れられない人がいます。

ある90代の男性が、ガンで余命三カ月を宣告されました。

(・・・本誌につづく)


AI時代は、人間が生きる意味をもっと考えていかねばならない時代になるのでは?と予想される若宮さん。

本誌を通して、日常で考えるきっかけをご提供できれば幸いです(^^)♪