高齢の父の部屋に、どんどん不要な物がたまっていくので困っています
70代の父は、母を亡くして一人で暮らしています。様子を見に行くと、部屋には、今は使わない物や、昔の物がたくさんあります。
私が不要な物を処分するように言うと、「これは、取っておきたい」「あれも捨てたくない」と不満そうです。ついつい口げんかをしてしまうこともあります。
このような親に、どんなふうに接すればいいでしょうか。
お年寄りの「不安」や「孤独」が原因かもしれません
「物を捨てられない」「自分の部屋や家の中に、不要な物がどんどん増えてくる」ということで、私の所にも、相談に来られる方が時々あります。多くは、ご本人というよりも、家族の方が心配して、あるいは困って、来られる方がほとんどです。「物を捨てられない」理由にはいろいろあります。
もともとの性格として、「もったいない」と感じて、何でも残しておくタイプの人ということもありますし、幼少期に貧しくて、物のない時代を過ごしたので、物がないと不安になる、物があると安心する、という人もあります。
あるいは、物を捨てるには、思い切りというか、一種の決断が必要ですが、それにはある程度の心のエネルギーが必要です。ところが、精神的に疲れたり、うつ病になったり、ひきこもりの状態になったりすると、そういう決断ができなくなり、それでどんどん物がたまっていく、ということもあります。
あるいはお年寄りで認知症の始まりとして、買ったことを忘れてしまい、再度買う、また、物が家にあるかどうか覚えられないので、不安からついつい捨てずに残してしまう、ということもあります。
それらがエスカレートすると、いわゆる「ためこみ症」という病的な状態になります。
これは、英語で「ホーディング」といい、「DSM-5」という、アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」(2013年)で初めて記載されました。「ゴミ屋敷」というと、日本でしばしば社会問題になっていますが、これは日本だけでなく、世界各国でも近年問題になっています。これを引き起こすのが「ためこみ症」という病気です。「ためこみ症」の症状は以下のようなものです。
① それほど価値はない物でも、捨てたり、手放したりすることが困難。
② 物を捨てることに、強い苦痛を感じる。
③ 捨てられないことによって、生活空間が物でいっぱいになり、部屋が本来の目的で使えなくなる。
④ 安全な環境の維持が困難になり、社会的に支障が出ている。
ご相談のお父さんの場合は、「ためこみ症」といえるほどの病的な状態ではないと思いますが、気持ちのうえでは共通するところもあるのかもしれません。
私が、「ためこみ症」も含めて、お年寄りで「物を捨てられない」人の相談で、しばしば感じるのは、その人の「孤独」です。
(『月刊なぜ生きる』令和4年5月号より)
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『月刊なぜ生きる』令和4年5月号
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