「人と関わると、とても疲れる」
「できれば在宅勤務がいい」
と言う娘が心配です
同居の30代の娘は、新型コロナウイルス拡大の影響でしばらく在宅勤務でしたが、最近、出社する機会が増えてきました。
もともと人間関係が苦手な娘は、「人と関わると、とても疲れる」と言い、「できれば在宅勤務がいい」と言います。こんなことでは、結婚もできず、引きこもりになってしまうのではと心配になります。娘の気持ちに任せておいてよいでしょうか。
コロナ禍により私たちの生活は大きく変わりました
コロナ禍により、私たちの生活は、大きく変化することを余儀なくされました。感染を防ぐには、人が接触する機会を減らすしかないということで、仕事は在宅でリモートワーク、学校はオンライン授業、集会や飲み会も軒並み中止となりました。人と接する機会が少なくなることで、寂しい思いをした人も多くありましたが、その一方で、そのほうが楽だ、助かる、という人も少なくなかったと思います。
不登校の子どもたちの中にも、オンライン授業になったことで、逆に授業に参加できるようになった子どももありました。
「人間関係が苦手」と言う人の共通点
ご相談の娘さんも、もともと人間関係が苦手で、「人と関わると、とても疲れる」と言っておられるとのことですが、私のところにも、このような相談はよくあります。
そしてそういう人の話を何度も聞いていると、ある共通点が存在することが分かります。
一つめは、「人間関係が苦手だ」と言っても、すべての人間関係を拒否しているわけでは必ずしもない、ということです。その証拠に、親や家族とはけっこう仲がよかったりします。家族の中に苦手な人(例えば父親など)がいることもありますが、母親やきょうだい、あるいは、いとことなら、普通に何でもしゃべれる、ということがあったりします。
また、逆に全く知らない人の中なら、それほど苦痛ではない、ということもあります。一人でショッピングセンターに買い物に出掛けて、好きな物を買ってきたりします。あるいは、学校に行きづらい不登校の子でも、コンビニのアルバイトは普通にできたりします。全く知らない人であれば、それほど苦痛なく接することができるのです。
ということは、「人間関係が苦手」と言っても、すべての人が苦手なのではなく、家族よりは距離があり、全く知らない人でもない、「中くらいに知っている人」が苦手、ということなのです。
そしてそういう人が集まっている場所が、学校であり、職場だといえるかもしれません。言葉を換えれば、すれ違った時に、挨拶を交わすかどうか、会釈を交わすかどうか、悩むくらいの人間関係の人、といってもいいと思います。
人間関係の苦手な人は、たいていそのくらいの距離感の人がいちばん苦手です。そういう意味で、この娘さんが、「できれば在宅勤務がいい」と言っておられるのは、分かる気がするのです。
二つめは、このような人には、もともと、とても人に気を遣う、優しい人が多いです。
(『月刊なぜ生きる』令和4年9月号より)
続きは本誌をごらんください。
『月刊なぜ生きる』令和4年9月号
価格 600円(税込)