Qひきこもりの弟に、どのように接すれば、社会に復帰できるようになるでしょうか

42歳・女性

私の弟(40歳)が全く仕事もせず、ずっと実家でひきこもりになっています。たまに私が実家に行き、顔を合わせると、何も言わず、すぐ逃げていきます。仕事に就いても、一カ月ぐらいで辞めてしまうようなことを繰り返しています。両親も育て方を間違えたと悔やんで、死ぬに死ねないと毎日言っています。弟に、どのように接すれば、社会生活に復帰できるようになるでしょうか。

明橋大二先生

まず、家族が本人の気持ちを理解することが、絶対に必要です

ひきこもりとは、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」(厚生労働省の定義)をいいます。

内閣府の調査によると、その数は、満15〜満39歳で、54.1万人、満40〜満64歳で、61.3万人といわれ、7割以上を男性が占めています。

最近では、「8050問題」といって、80代の親が、50代のひきこもりの子どもを抱えて悩んでいるケースも少なくなく、大きな社会課題となっています。

厚生労働省も、近年はその対策に力を入れていて、平成30年4月時点で、すべての都道府県と政令指定都市(67自治体)に、「ひきこもり地域支援センター」を設置し、平成30年度からは、市町村におけるひきこもり支援を充実させるため、「ひきこもりサポート事業」を実施しています。

私の所にも、よくひきこもりについての相談が寄せられますし、年単位でカウンセリングに通っている人(本人あるいは家族)もたくさんあります。

本人の苦しみはもちろん、家族の悩みも深く、この質問者の方が、姉として心配されているお気持ちも、とてもよく分かります。

なかなか特効薬というものもないですし、すぐに解決できる問題でもありません。気長につきあっていく必要があることは、この方もよく分かっておられると思います。

しかしその一方で、こういう時に、本人の回復のために、家族として、やったほうがよいこと、やらないよりはやったほうが絶対によいことが必ずあると思っています。

それをいくつか今回はお話ししたいと思います。

「とんでもない親不孝者だ」と、本人は自分を責めて、責め抜いているのです

まず、絶対に必要なことは、家族が本人の気持ちを理解する、ということです。

しかしこう言うと、本人に聞いても、答えてくれないし、しゃべってもくれない、どうやって本人の気持ちを理解すればいいのか、と言われると思います。

確かに本人から気持ちを聞き出すことはできません。本人が自分の気持ちをきちんと言葉にして語れるようになるのは、相当あとになってからで、かなり回復してきて、初めて語れるようになることが多いです。それまでは、なかなか言葉にできないし、そもそも自分の本音を自覚することさえできないことが多いです。

では、本人の気持ちを知る方法はないのかというと、そんなことはありません。方法はあります。それは、同じようにひきこもりの体験をした当事者の話を聞いたり、手記を読んだりする、ということです。

確かにひきこもりになった具体的ないきさつは人それぞれです。しかし結果として、ひきこもりになって、家で過ごしている本人の気持ちは、驚くほど共通しています。

それは一言でいうと、自責の念であり、無力感であり、罪悪感であり、絶望感です。

多くの当事者は、自分がひきこもりになったのは、自分に根性がないからだ、弱いからだ、能力がないからだと、自分を責めて責め抜いています。そのうえ、働きもせずに飯ばかり食べている、いわゆる穀潰しで、両親をがっかりさせ、苦しめ、経済的な負担もかけている、とんでもない親不孝者だと、自分を責めています。また、こんな自分は、もう何をやっても無駄だ、自分には生きている価値さえもない、ゴミ人間、クズ人間だと思っています。「自分の人生は終わった」と、ほとんどの人たちが思っています。だから、本来は自殺すべきなんだけれども、自殺する勇気さえもない、とことん最低の人間だと、自分を責めています。だから、自分の人生にはこの先、絶望しかないし、生きているだけで害悪でしかないと思っています。

確かに、表面的にはゲームに熱中していたり、動画を見て笑っていたりすることもあるかもしれませんが、それは内心の絶望感を紛らわせるためのものであって、決して心の底から楽しんでいるわけではありません。

また、親や家族を責めて、「おまえのせいだ」と言ってくることもありますが、それは決して本音ではなく、いちばん悪いのは自分だと本当は思っているのです。しかしそれを考えだすと死ぬことしか考えられなくなるので、少しでもそのつらさから逃れようと、「親のせいだ」と思おうとしているのです。

(『月刊なぜ生きる』令和5年1月号より)

続きは本誌をごらんください。

『月刊なぜ生きる』令和5年1月号
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