【小説】泣こよかひっ飛べ 第14回 父の手紙

(前回までのあらすじ)

桜島を臨む港から、武者修行に行く約束をした捨八たちだったが、残るはずの啓一郎が一人、舟に乗り旅に出た。浜之市に到着し、翌日、日向を目指して旅をする最中、たどり着いた踊の村で、村の子どもたちに錦定寺への道を案内してもらう。道中、霧島と町の絵を描いていることを、役人にとがめられてしまうのだが、その場に現れた錦定寺の和尚が場を収めたのであった。

◆◇◆

まだ暖かみを残した夕は、低い地上から次第に高みに昇っていき、霧島の山々の雄大な嶺も最後の光を見せて、とうとう町も野も山もおおってしまった。

錦定寺の南向きの開け放された方丈の間に、啓一郎が唯一人正座っている。

傍には骨太のがっしりした行燈(あんどん)がある。

たった今点けられた火は、まだ燈心に花も咲かず、白色の火が、庭先から差す月の光と、等分に部屋を領している。

「どうぞ、お一人でお手紙をお読みなさりませ」

と言って、和尚は父の使いだという町人風の男をうながして、障子を立てて部屋を出ていった。

二人の足音の遠ざかるのを聞いて、啓一郎は行燈の傍に座った。そして和尚から受け取った手紙の上書きを改めた。

啓一郎殿と書かれた整った力強い文字は、確かに懐かしい父の手である。

啓一郎は一礼して封を切り、中を取り出して開いて読んだ。

お前がこの便りを見るのは、霧島あたりであろう。と、冒頭が置いてある。

啓一郎は思いもよらない父の便りに、身を乗り出して読み進めた。

(『月刊なぜ生きる』令和5年4月号より)

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