【第11回】日々を彩る書道エッセイ 花咲く書道
今月のテーマ「風」

花咲く書道家・永田紗戀(ながたされん)さんが、作品に込めた想いをエッセイで綴ります。

花咲く書道の描き方も写真付きで紹介。気持ちの伝わる「書」が魅力的です。
見るだけで心に花が咲いたような、気持ちが和らぐコーナーです。

東京は人が多すぎて、すれ違う人なんてほとんど気にしません。ただすてきな人はすてきだなと、風のように感じるだけ。けれど隣に座った途端、時にそのすてきな人と自分をすぐに比べ始める、器用な生き物でもあるのが人間だと思います。

「ここに来ている人たちは、みんな幸せそうに見えます。私とは違います……」 

昔、生徒さんに言われたこの言葉。一人になって白い紙に向かおうとする瞬間に、なぜか時々思い出しています。素直な彼女の言葉に不思議と心が温かくなり、ただ微笑みながらうなずくだけだった私。

“あの子が持っているのに私にはない”

少女の頃の「私」を占めていた感情もたまに思い出します。それは父親だったり、なかなか会えない母親との時間だったり。どこのお店を探しても売っていないもの。

「離婚したことは隠そうね」。母は優しく私に言いました。小学校では苗字もそのまま、父がいる設定で友達と話を合わせるから、うそか現実かよく分からなくなる時もありました。虚像の中の父は私の理想になり、お父さんに買ってもらったとうそをついて、一人で買った文房具を見せびらかした日は女優になれるかもしれないと思ったものです。

プロフィール

花咲く書道家
永田紗戀(ながたされん)

言葉から生まれる絵のような書。
唯一無二の世界観で多数の作風を描き出し、幅広い年齢層の女性たちに支持される。

永田紗戀公式ウェブサイト

(『月刊なぜ生きる』令和4年10月号より一部抜粋)

凛とした「風」と色鮮やかな「紅葉」のデザインに込められた永田先生の想いとは?

エッセイ全文と花咲く書道の描き方は 『月刊なぜ生きる』令和4年10月号をごらんください。

▼今回の作品はこちら▼


『月刊なぜ生きる』令和4年10月号
価格 600円(税込)