「手に汗して地球を守る」 (産業廃棄物処理業(株)ハチオウ会長・森裕子さん)

産業廃棄物処理業(株)ハチオウ会長
森裕子さん

夫とともに産業廃棄物処理の会社を創業したのは52年前。

以来、処理が難しい化学系の廃棄物を無害化処理するパイオニア的企業として業界をリードしてきた。

当初は社員の確保すら難しかった会社を発展させたのは、「手に汗して地球を守る」という「夢と志」を社内に徹底したことにある。

「目的が明確になれば人は変わる」と、にこやかに語る森裕子さんに、人づくりにかける思いを聞いた。

生態系を乱す
科学物質を無害化

森さんの会社は、東京・墨田区に本社のある「株式会社ハチオウ」。廃棄される数万種類にも上る化学物質が「生態系に及ぼす影響は大きく、これを無害化処理することが私たちの使命です」と森さんは言う。

腐食したドラム缶内の化学物質処理は危険と隣り合わせ。防護服や排気設備などを
用意した慎重な取り扱いが求められる(写真提供・株式会社ハチオウ)

東日本大震災のあと、福島県の「帰還困難区域」に残された危険な化学系廃棄物の処理の依頼があった時も、「ハチオウがやらなくて誰がやる」の気概で、現場の社員は一年二カ月の作業に当たった。「行政機関からも、化学系の廃棄物のことならハチオウに相談しろ、と言っていただけるのは、とてもありがたいことです」と森さんは笑顔を見せる。

そんな森さんも、夫が社長として会社を創設した頃は、産廃については全くの素人だった。「大学を出てすぐに結婚した私は、世の中のことを知らず、すべてがゼロからのスタートでした」と振り返る。

そうした中、産廃業に対する会社の志と社会の認識とのギャップに、愕然とする場面に出遭うことになる。

経営の原点にある
「泣いて帰ってきた社員」

昭和60年代のある日、取引先から戻った新卒社員が森さんに訴えてきた。「この仕事をしていたら、結婚できません」「夢なんか持てない」と言って、涙をボロボロ流している。当時の仕事は、廃棄された写真フィルムや廃液から銀を取り出して大手貴金属店に卸す一方、その排出物は無害化処理するというもの。

理由を聞くと、「取引先の会社に回収に行った時、受付の若い女性たちが『ゴミ屋さんが来たわよ〜』『くみ取り屋さんですよ〜』と担当者を呼ぶと言うのです。もちろん、それらの回収は大切な仕事ですが、いかにも人を見下した対応に社員は傷ついていました。フィルムの回収袋には鼻をかんだ紙やら別のゴミも投げ込まれているのです」

衝撃を受けた森さんは、社員たちを守らなくては、と取引先の上位五社の社長との直談判に出掛けていった。

産廃事業に
夢とロマンを

「取引を断られたらどうしようとも思いましたが、とにかくうちの会社の志を話しました。そうしたら思いのほか、どの社長さんも理解してくださり、その会社の朝礼や社内報などで、私の思いをお伝えすることができました」

しかし、なおも世間に吹く風は冷たく、森さんが社員採用のために公共職業安定所や学校を回っても、「産廃って何?」「お宅みたいな会社に行く人はいないですよ」などという対応ばかり。せっかく入社希望の学生がいても、親からは「そんな産廃業なんて……」と反対されてしまう。「みんながもっと意欲を持って働ける会社にするにはどうしたらいいのか? 悩んでいた時、あるセミナーで耳にした話に、目の覚める思いがしたのです」。それは「三人のレンガ職人」という話だった。

(『月刊なぜ生きる』令和4年5月号より)

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