東日本大震災からの復興を応援したい(株式会社東方インターナショナル代表取締役社長・福島大毅さん )

福島大毅さん
(株式会社東方インターナショナル代表取締役社長)

「生まれはチャイナ(中国)、死ぬ所はジャパン(日本)です」

笑顔で、こう語るのは、株式会社東方インターナショナルの社長、福島大毅(ふくしま だいき)さんです。

東日本大震災が発生した直後に、日本への帰化を申請。自らの姓を、あえて「福島」にしたのは、

「東北の復興なくして、日本の未来はないと思います。放射性物質による風評被害にさらされている福島を応援したいから」。

なぜ、そこまでの思いを抱くようになったのか。

東京都豊島区池袋の、東方インターナショナル本社を訪ねて、福島社長にお聞きしました。

新聞、雑誌、インターネットなどで、世界へ情報を発信している

新聞、雑誌、インターネットなどを使って世界へ情報発信を続けている福島社長に、『月刊なぜ生きる』をお渡しすると、「おお! 『なぜ生きる』、これは、とてもいいタイトルですね。人間にとって、大切なテーマです」という言葉が返ってきました。

人一倍、苦労して、前向きに生きてきた姿を感じさせる一言でした。

福島社長が、株式会社東方インターナショナルを設立したのは、1994年の4月。来日してから6年後のことでした。


山崎 福島社長が、中国から日本へ行こうと決意されたのは、何か、きっかけがあったのですか。

福島 私は、中国の上海出身です。17歳の時から農場で働き、その後、23歳から造幣局に勤めていました。

当時の私は、「なぜ生きるのか」と問われたら、「生まれたからしょうがない、運命だから」と答えたと思います。

上海も豊かになり、日本から、たくさんの情報が入ってくるようになりました。

栗原小巻さん、高倉健さん、山口百恵さんなどに、あこがれましたね。

30歳の時に、「海外で、自分の人生を、再出発させたい」と思い、日本へ行くことを決意したのです。家族は反対しましたが、父だけが認めてくれました。日本へ行って何ができるかは、全く分かりませんでしたが、自由な世界へ飛び出したかったのです。

上海で日本語学校へ通い、苦心してパスポートを取得することができました。念願かなって日本に着いたのは、1988年5月23日。私は32歳でした。

所持金は、1万円と20ドルだけでした。ここから私の日本での生活が始まったのです。

日本人は、とても優しい!
外国人の私を、差別しなかった

福島 成田空港に着くと、東京都北区東十条のアパートへ向かいました。六畳の部屋で、8人で生活するのです。

高田馬場に行けば、建設現場などの日雇いの仕事があると聞いていましたが、一週間たっても見つかりませんでした。仕事がなければ、生きていけません。かなり怖かった。

日本は、確かに自由です。しかし、私が死んでも、誰も私とは関係がない。そういう意味で孤独です。私は、「中国から日本に来た学生です。仕事ありませんか」と言って、一つ一つの店を回りました。

ようやくJR 御茶ノ水駅の近くにあったパン屋で仕事が見つかったのです。売れ残ったパンをもらえるのでうれしかった。それから、居酒屋、ラーメン屋、ハンバーガーショップ、観光バスの掃除……、何でもやりました。

当時の日本人は、本当に優しかった。外国人の私を、全く差別しなかった。

山崎 アルバイトは、いくつも掛け持ちしたのですか。

福島 私は、大塚駅の南口にあった日本語学校へ通いながら、一日に三つの仕事をしていました。

早朝、パン屋へアルバイトに行ってから学校です。

ランチタイムには中華料理屋で二時間働きました。学校の授業の時間に食い込んでしまうのですが、アルバイトをしないと生きていけないことを先生に説明すると、許してくれました。先生も、本当に優しかった。

夜はバス車庫へ行き、観光バスの車内清掃から、車体も洗いました。作業が終わるのが11時を過ぎると、帰る電車がなくなるので、そのまま車庫の物置で寝て、早朝にパン屋のアルバイトへ直行です。

私は30年以上、日本にいますが、日本語はこの程度です。しかし、恥ずかしくはありません。命をかけて働かなければならなかった。これが私の人生です。

私が睡眠時間を削って働いたのは親孝行をしたかったからです。日本で働いて得たお金は、節約して、なるべく中国の両親へ送っていました。

あの頃は、一日頑張ったら一万円ほどの収入がありました。それは、中国で十カ月間働く給料に相当する金額だったのです。仕事が一日なかったら、十カ月分の給料が入らないのと同じですから、真剣に仕事を探し、全力を尽くしていました。

(『月刊なぜ生きる』令和4年5月号より)

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