【第2回】日々を彩る書道エッセイ 花咲く書道|今月のテーマ「咲」

花咲く書道家・永田紗戀(ながたされん)さんの連載が『月刊なぜ生きる』で始まりました♪
今月のテーマにまつわるエッセイと、花咲く書道の描き方を写真付きでご紹介。
見るだけで心に花が咲いたような、気持ちが和らぐコーナーです。

「あなたが生まれた日は桜が満開に咲いたの」

真冬は春が恋しくて、つい、一人娘に今年も同じことを言ってしまいます。

「あなたが生まれた日は雪が降ったの」

一月は私の誕生日。
小さい頃から、母に言われ続けてきたせりふ。ちょっとほほえみながら、なぜか切なそうに……。
まるで女優のような母のこの表情を見るたびに、私はお母さんを幸せにするために、生まれてきたんだと、思うのでした。

仕事で忙しい母に代わり、祖母に育てられた私は、学校がつらくなると、祖母にお願いしてこっそり休んでいました。
祖母は母に黙っていてくれました。

昼間の知らないテレビを祖母と見ながら心はずっと痛みます。
私はお母さんの望むような白い雪じゃない、真っ黒な雪…… 吹雪のように心は冷え切っていきました。

難産の末に、私も母になったその春の日は桜が満開でした。
手のひらにおさまるくらいの小さな頭は、ずっしりと重く、右も左も分からぬまま、不安とともに退院した春の日。
晴れた青空も、暗い空に降る雨音さえも、この子にとっては、初めてであると想うと、すべてが愛おしくなりました。
あれからずっとただ、この子が笑っていられるように、それだけを祈ってきたかのように思います。

(『月刊なぜ生きる』令和4年1月号より一部抜粋)

エッセイ全文と花咲く書道の描き方は『月刊なぜ生きる』令和4年1月号をごらんください。

『月刊なぜ生きる』令和4年1月号
価格 600円(税込)