紙芝居しようよ、大人こそ!(絵本・紙芝居作家 やべ みつのりさん)

みんなで見る楽しさが、孤独を笑い飛ばす

絵本・紙芝居作家 やべ みつのりさん

「高齢者の介護施設で、紙芝居が大人気!」
「認知症の人にも、いい効果がある」

こんなニュースを耳にしたので、紙芝居に長年関わっている、やべみつのりさんを訪ねました。

「今、紙芝居の素晴らしさが、見直されているんですよ。大人から子どもまで、いろんな場面で注目を集めています。見ているみんなが共感できるのが紙芝居です。誰かを孤立させることなく、一緒に楽しむことができる、最も素朴なコミュニケーションのツール(道具)なのです」

こう語る、やべさんは、国内だけでなく、海外にも紙芝居を広めていらっしゃいます。

聞き手/山崎 豊(本誌編集長)

◆◇ ◆◇ ◆◇

「やべみつのりさんに会う前に、『ぼくのお父さん』( 矢部太郎著・新潮社)を読んだほうがいいですよ」と、絵本作家の長野ヒデ子さんからアドバイスを頂きました。

『ぼくのお父さん』は、昨年6月に発売されるや、わずか一カ月で10万部を突破したベストセラー漫画です。ここで初めてつながりました。お笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎さんは、やべみつのりさんの長男なのです。

この本を読むと、「父の生き方が、息子に、ちゃんと伝わっている」と感じ、とても温かく、幸せな気持ちになりました。ほのぼのとした絵、静かに語りかける文章が、本を閉じてもずっと心に響いてきます。『ぼくのお父さん』は、「漫画」というよりも、父への感謝を込めた「詩集」だと思います。やべみつのりさんが、絵本と紙芝居にかける思いの原点が、この本に収まっているように感じました。

世の中の激しい流れに、流されたままで、
生きる意味はあるの?

東京都東村山市のアトリエにおじゃましました。

やべさんは79歳。昨年、脳出血で倒れ、二カ月間、入院されたと伺っていましたが、アトリエ近くの武蔵大和駅まで迎えに来てくださいました。とてもお元気そうです。

山崎 どんなきっかけで、絵本や紙芝居の世界へ入られたのでしょうか。

やべ 僕は倉敷(岡山県)で育ちました。子どもの頃は街頭紙芝居が盛んでしたね。

どこからか、黒い自転車に乗って、紙芝居のおじさんがやってきて、カチカチカチと拍子木の音を鳴らします。すると僕は、五円玉を握りしめて「紙芝居劇場」となっていた空き地へ走りました。料金が五円だったからです。

クイズで始まり、少女悲劇、怖い怪奇物、おしまいに黄金バット。おじさんの紙芝居を夢中になって見ていました。そんな体験もあって、小さい頃から絵を描くのが好きでしたね。

僕の父親は、大阪でクリーニングの修業をして、せっかく店を開いたのに、戦争が始まったので、やむなく倉敷の実家に帰ってきたのです。どんなにか、悔しかったと思います。

僕は子ども心に、「親はお金がないから苦労しているんだな、困っているんだな」と、すごく感じていました。

だから、高校を卒業したら、お金をたくさんもらえる会社へ入ろうと思ったのです。

広島の自動車メーカー・東洋工業(現・マツダ株式会社)に就職し、デザイナーとして、新聞広告や工場見学の子ども向け冊子や、カタログの作成などをしていました。

自動車メーカーに入りましたが、もともと車にはあまり興味はありませんでした。僕の生きがいは、お金をたくさんもらって、せっせと親へ送ることだったのです。

でも、6年くらい送金を続けていると、何となく、自分の生き方が「このままでいいのかな」と感じ始めたのです。「こういうこと、本当に、やりたいことなのかな……」と。

ちょうどその頃、詩人の友達から、「一緒に東京へ行こうよ」と誘われました。

「そうだ!」と思い、深く考えずに会社を辞めてしまったのです。やはり「東京」にあこがれがありましたね。何か、新しい世界があるのではないか、と。

23歳の時でした。ハッキリしたあてもなく、東京へ飛び出したのです。若かったから、そんな無謀なことができたのでしょうね。

世の中は、高度経済成長期でした。イケイケムードに乗って、フリーのイラストレーターとして、いろんな企業の仕事をしていました。

でもやはり、だんだん分からなくなっていったのです。何のために、誰のために絵を描いているのか……。

友達と、飲めない酒を飲むことが多くなりました。新宿の道路で手を広げ、車に向かって「ひけるものなら、ひいてみろ」と自虐的に騒いでみたり……。煮詰まっていましたね。僕は、あの辺で終わっていたかもしれません。

山崎 「何のために生きるのか」は、誰もが感じている疑問だと思います。この問いに答えが出ない限り、悔いのない人生は送れません。やべさんは、目をそらさずに、真っ正面から「なぜ生きるのか」を、問い続けておられたのですね。どのようにして、乗り越えられたのですか。

(『月刊なぜ生きる』令和4年4月号より)

続きは本誌をごらんください。

『月刊なぜ生きる』令和4年4月号
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