【試し読み】古典を楽しむ『徒然草』~どんな人と友達になれば、幸せになれますか?~

友とするのに、よくない者が、七とおりいます。

一つには、身分が高く、偉い人。

二つには、若い人。

三つには、病気をしたことがなく、非常に健康な人。

四つには、大酒飲み。

五つには、勇敢な武士。

六つには、うそをつく人。

七つには、欲の深い人。


よい友に三とおりあります。

一つには、物をくれる友。

二つには、医者。

三つには、知恵のある友。


【原文】

友とするにわろき者、七つあり。一つには高くやんごとなき人。二つには若き人。三つには病なく身強き人。四つには酒を好む人。五つには武く勇める兵。六つには虚言する人。七つには欲深き人。
よき友、三つあり。一つには物くるる友。二つには医師。三つには智恵ある友。(第一一七段)


◇◆解説◆◇

原文には「友とするにわろき者」とありますが、これは「悪友」という意味ではありません。「他に比べて劣っている友」「どちらかといえば避けたい人」という意味合いです。

友達になりたくない人の第一に「身分が高く、偉い人」を挙げるとは、意表を突いていますね。兼好法師は、「そんな人とは、対等に話ができないから、肩が凝るだけですよ」と言いたいのでしょう。また、「偉い人は、ひとりよがりで、相手に配慮できない人が多いから、私は、ごめんだね」というつぶやきが聞こえてきそうです。

第二が「若い人」。これは若者を嫌っているのではなく、「年齢の差が大きいと、若い人に合わせるのは、体力的に大変だよ」という気持ちからでしょう。

第三の「病気をしたことがなく、非常に健康な人」は、どうしても、病弱な人の気持ちが分からず、思いやりに欠けることが多いからです。

第四が「大酒飲み」。『徒然草』には、酒を飲んで醜態をさらす人々の姿が、何カ所も書かれています。兼好法師は、酔っ払いには我慢できなかったようです。 

第五が「勇敢な武士」。現代でいえば、荒々しく血気にはやっている人に置き換えてもいいでしょう。

第六の「うそをつく人」、第七の「欲の深い人」は、誰もが避けたい相手だと思います。


よい友のトップに、「物をくれる友」を挙げたのは、少し露骨な感じがするかもしれません。しかし、兼好法師は、釈迦の教えを根拠にしているのだと思います。

仏教では、「相手に与えることだけを考えなさい」と、布施の大切さを教えられています。

困っている人に、食べ物や品物を援助することだけが布施ではありません。優しい言葉をかけ、明るい笑顔で接し、親切を心掛け、助け合うことも布施にあたります。「布施の精神で、周囲の人に喜びを届けている人は、素晴らしい人です。そういう人と友達になれば、きっとあなたも、幸せな日々を送れるようになれますよ」と、兼好法師は伝えたかったのです。

(『月刊なぜ生きる』令和3年7月号より一部抜粋)

ほかにも本誌にはこのようなテーマを載せています。

・ゴミ箱のゴミは、多くても見苦しくない

・年老いたからといって、悲観する必要はありませんよ

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